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〇ワシントン州ではマスクは義務

 「くそっ!マスクがない!!!」

 これはダンナが毎日言うセリフだ。

 頂いた手作りマスクはすでに10枚を超えている。マスクがないわけではない。洗っていないだけだ。

 そして、毎日1枚、必要な分だけを洗うので、翌日になるとやっぱりマスクがない。

 10枚洗えばしばらく困らないのになぁ・・・と思うけれど、私が困るわけではないので、

「へー」

 と、こちらも毎日同じ返事をしている。


 公共の場でのマスク着用は、ワシントン州で義務付けられている。

 私が働いているグロッスリーストアの入り口には、

「No Mask No Service(マスクを着用していない方へのサービスはお断りしております)」

 というサインがあり、マスクを忘れた方には、無料で進呈している。働いている従業員はもちろん、お客さんも安心して買物ができる。

 1週間くらい前のことだ。

 私が大量の荷物を積んだカートをガラガラと運んでいると、客のひとりが、店のトラブル担当者3人を前に、なにか文句を言っている姿が目に入った。

 方向転換することもできず、そのまま彼らの間をガラガラと通り過ぎるとき、チラリと見ると、その女性はマスクを着用しておらず、担当者たちは一様にシリアスな顔をしていた。

 その女性はモデルのようにスラリと背が高く、女優のように美しく、ひと目で高価とわかるパンツスーツに身を包んでいた。

 しかし、その美しい彼女は、マスクを付けずに入店し、着用を求めてきた担当者たちに対し、銃をちらつかせて、マスクの着用を拒否し続けたらしい。

 銃で脅されたら、着用を強制することも、店から追い出すこともできない。

 結局、担当者に見張られた状態で、買物をすました彼女は、帰る途中でパトカーに囲まれ、逮捕された。選挙が近づくと、平和なシアトルでもこのような輩が出てくる。

 7月に入るまで、マスクの着用を拒否し続けたトランプ大統領の影響は多大だ。

 トランプ派、共産党支持者は、マスクを着用しないことを強さの象徴と捉え、マスク着用の義務化を、個人の自由が奪われることだと考える。そして、トランプ大統領への支持を示すために、マスクをしない人も少なくない。

 しかし、マスクをしなければ、コロナウィルス感染へのリスクも高くなる。

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〇トランプ大統領が陽性に

 10月2日、金曜日の午前中、トランプ大統領と大統領夫人は、コロナウィルス検査で陽性結果が出たという発表があった。

 その後、ホワイトハウスでは、次々と陽性患者が確認されている。当然である。

 ホワイトハウスでコロナ感染者が増加している中、トランプ大統領は病院で最高の治療を受けていた。

 そして72時間後の月曜日には退院し、ホワイトハウスへ戻ってきた大統領は、入口でマスクを外し、リポーターに親指を立て、マリーンに敬礼をした。

「コロナを恐れるな!」

 と、強い大統領の姿を国民に見せたのかもしれない。

 けれども、この国では、すでに21万人以上の人々が亡くなっている。

 しかも、トランプ大統領が感染したのは、9月26日にホワイトハウスのローズガーデンで開かれた、パーティ会場ではないかと言われている。

 参加者の多くが、マスクをせず、素手で握手をし、ハグをしていた。そしてその後、少なくとも8人が感染したからだ。

 大統領主催のこのパーティで、トランプは、9月18日に亡くなった、連邦最高裁判事のルース・ベイダー・ギンズバーグの後任に、エイミー・コニー・バレットを指名すると発表した。

 ルース・ベイダー・ギンズバーグは、1993年から27年間、リベラル派の連邦最高裁判事として、アメリカ社会に大きな影響を与えた人物だ。

 彼女は多くの性差別訴訟を手掛けた。男女の間にある、時代遅れの固定観念をなくし、女性に平等をもたらすために、四半世紀を費やした。

 また、障害者のため平等な市民権のために、戦ったことでも知られている。彼女はすべての人々の味方だった。

 名前の頭文字から「RGB」の愛称で親しまれ、多くの人から愛された判事だった。

 通常、法律に基づいた意見以外は延べない判事が多いけれど、彼女はユニークだ。彼女は自分自身の意見を、彼女の言葉ではっきりと述べた。

 言葉だけではなく、装いも、黒いローブの上にいつも襟飾りを付けていた。

 自分らしく、自分の言葉で、自分独自のアプローチで問題と向き合うギンズバーグは、多くの黒人からも愛された。

 そんな彼女は、自分が引退することにより、連邦裁判所の保守化が進むことを危惧し、膵臓癌で入退院を繰り返しながらも、亡くなるまで、判事の座を維持し続けた。

 新しい大統領の就任まで、ギンズバーグは後任人事が行われないことだけを願っていたはずだけれど、トランプ大統領は、彼女が亡くなるとすぐに、後任としてエイミー・コニ―・バレットを指名したのだ。

 連邦裁判所判事は9名で、進歩派のギンズバーグが亡くなった現在、保守派が4名、中道派が1名、進歩派が3名という構成だ。

 保守派のバレットが就任すれば、今後数十年間、連邦裁判所は保守派が多数となり、ギンズバーグが貫いた、アメリカ国民の自由と平等が、崩される可能性がある。

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〇ジョージ・フロイド殺害犯は保釈へ

 なんだかイヤ~な感じだなぁ・・・と思っているところへ、10月7日、ジョージ・フロイド氏を殺害した、デレック・チョーヴィンが、1億円の保釈金を支払い、釈放されたというニュースが飛び込んできた。

 彼が、州施設に拘留されることは、もうない。携帯電話で連絡さえ取れれば、他の州へ引越をしても構わないそうだ。

 ちなみにこの保釈金は、警察ユニオンがかき集めた募金から支払われている。

 ユニオンは、警察官が事件を起こした場合、全国の警察官から募金を集め、その警察官を留置所から救い出す。また、一度は解雇しても、ほとぼりが冷めた頃に、他州の警察署での再就職を手配する。

 今回は大きな事件だったので、デレック・チョーヴィンの再就職は不可能かもしれない。が、リタイア後の年金は補償されている。

 警察ユニオンがある限り、この国の警察官による黒人殺害は終わらないだろう。

 実際、2020年は、コロナの影響で、多くの人が外出を控えているはずなのに、6月20日時点における、黒人射殺件数は過去4年間(2015年から2019年)とほぼ同じだ。この半年間で511人、1週間で19.4人が殺される割合だ。

 デレック・チョーヴィンの、このタイミングでの釈放は、トランプ大統領の選挙キャンペーンの一環だとも言われている。

 この国の白人至上主義者たちは、白人のパワーを維持するためならどんなことでもする。警察官が黒人を殺すこともウェルカムだ。

 連邦裁判所が保守派で固められたら、この事件の判決が、無罪になる可能性もある。

 なーんて考えていると、心が暗くなりそうだけれど、現在、ジョー・バイデンは、トランプ大統領をリードしている。

 共産党支持者の中には、共産党は支持するけれど、独裁者のトランプ大統領は支持できない、という人も多くいる。

 また、第一回討論会の結果と、今回のトランプ大統領のコロナウィルス感染は、

「どちらにしようかな・・・」

 と迷っている人たちの気持ちを、バイデン氏に傾かせたようだ。

 そこで、トランプ大統領は、黒人コミュニティをサポートするための、「プラチナム・プラン」を打ち出した。

「次の4年間で、黒人のために3ミリオンの仕事を作る」

「50万件の黒人が所有するビジネスを50万件に増やす!」

 と、夢のようなプランが延々と述べられているけれど、黒人票を増やすためのプランなのは見え見えだ。

 警察官をサポートする、嘘つき大統領には騙されないぞ。

 2020年大統領選挙はもうすぐです。

  ルース・ベイダー・ギンズバーグの戦いが無駄になりませんように!!

  彼女が願った国民の平和と平等が実現し、この国から暴力がなくなりますように!!<了>


  大統領選についてはここでも書いています











るる・ゆみこ★神戸生まれ。大学卒業後、管理栄養士で数年間働いた後、フリーターをしながらライヴへ行きまくる。2004年、音楽が聞ける街に住みたいという理由だけでシカゴへ移住。夜な夜なブルーズクラブに通う日々から一転、一目惚れした黒人男性とともに、まったく興味のない、大自然あふれるシアトルへ引っ越し、そして結婚へ。

http://blog.livedoor.jp/happysmileyface/